採用する人が決まったら…
 採用活動は、当たり前の事ですが、採用する人を決めたらそれで終わり…ということはありません。むしろ、ここからの対応が、より業績の良い企業となるためには重要です。
 採用した人に対応しなければならないのは当然のことですが、採用しなかった人に対しての気配りには十分な注意をする必要があります。これは、採用しなかった人も御社の製品を購入したり、サービスを受けたりするお客様である可能性が間違いなくあるためです。
 直接消費者と接する業種であれば事後対応の悪さは顕著に問題となりますが、そうでなくても、採用しなかった方が最終的な消費者となる可能性はあります。また、最近では、対応が少しでも悪ければ、インターネットで簡単に悪評を立てる人もいます。事実と違う内容であったとしても、それがお取引先様の目に留まった場合、好ましくない結果となる可能性は否定できません。どのような形であれ、関わった方とは真摯にご対応されることをお勧めいたします。

 まず、採用されなかった方には、できるだけ早い時点で不採用の通知をなさって下さい。通知そのものは、電話連絡でも郵送でも構いません。しかし、不採用通知は、できるだけ早く提出書類と共に郵送されるのが良いでしょう。
多くの場合、応募の時点で履歴書や職務経歴書等の提出を求めていらっしゃると思いますが、これらは重要な個人情報となります。時々、履歴書等を、面接終了後もそのまま所持されているケースがありますが、従業員とはならない方の個人情報は、できるだけ速やかに返却された方が、企業防衛の観点からも好ましいと言えます。
提出書類の返却をするのであれば、同時に不採用通知を郵送するのが合理的でしょう。この場合、特に電話連絡の必要はありませんが、郵送であればそれだけ余分な時間が掛かりますので、早い時点での返却(通知)を心掛ける必要があります。採用しないからといって、長期間放置することは避けなければなりません。
この場合の不採用に関する文面は、一般的なもので十分です。むしろ、淡々と事実だけを伝える内容が良いでしょう。ただし、ねぎらいの言葉等、応募者を傷つけない配慮は必要です。

 採用された方への通知については、採用を決められたのであれば当然の事ではありますが、できるだけ早く通知をなさって下さい。この通知も電話でも郵送でも構いませんが、この場合は、一度電話連絡をした上で、書面を送られるのがより良いと思います。これは、他の企業への就職を避けるために、とりあえずは正式の通知とは別にお知らせをしておく、という程度の意味です。採用するのであれば、書面での通知はしておくべきでしょう。

 特に、内定という形で採用決定から実際の勤務までの期間が比較的長い場合には、書面での通知が必須となります。これは、内定取消が解雇に準ずる扱いとされるため、万一の場合への対策として重要となります。事前に整えておくべきこととして、内定取消に関する項目を就業規則に規定しておくことをオススメいたします。内定取消は解雇ではありませんが、解雇同様に就業規則の規定に沿った対応をしている必要があります。その上で、内定通知書で内定取消に関する自社の規定を知らせ、それに該当する場合は内定取消をする事を明確にしておく必要があります。
 この場合の内定取消理由は、解雇ほど強い規制ではありませんが、社会通念から大きく外れたものとする事はできません。この取消理由に少なくとも入れておきたいのは、学校卒業・資格取得など採用の前提となっている事項が達成されなかった場合と、体調等の不良による場合、そして、会社側の経営状況の悪化等による採用中止です。その他にも各企業によって入れるべき事があると思いますので、御検討いただきたいと思います。

 内定通知が必要なほど長期間の間を置かない場合は、通常の採用の通知を行う事になります。この採用通知には、最初に出社していただく日時とその時に持参していただくものについて書いておく必要があります。電話でのお知らせは採用することとなった事実のみとし、詳細については書面で通知するのがベターだと思います。
 持参していただくものには、手続きに必要な年金手帳や雇用保険被保険者証(前職がある場合)が最低限含まれることとなります。その他は、各企業によって、また書類の事前交付によって必要なものが変わると思いますので、必要に応じて記載していただくこととなります。
 労働条件通知書や雇用契約書は、面談の上交付すべきもので郵送するべきものではありません。本来的には事前に通知、締結するべきものですが、日程が取れなかった場合は、やむをえませんので勤務の初日に交付することとなります。入社前に会う機会があれば、極力事前に行う方が望ましいです。

2013.2.8



「良い人」を採用するための相談室
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