「働き方改革」とは?(2)
 働き方改革についての続きです。

 二つ目の課題として「制約の克服」があるのですが、この基礎となっている考え方は「ワークライフバランス」です。ワークライフバランスを考えるにあたって、「長時間労働の是正」「柔軟な働き方がしやすい環境整備」「病気の治療、子育て・介護等と仕事の両立、障害者就労の推進」「外国人材の受入れ」「女性・若者が活躍しやすい環境整備」等が検討テーマとして挙げられています。
 「長時間労働の是正」については、1日の時間の使い方として労働時間が長いことは好ましくないというところから考えられています。もちろん過労死等は絶対に避けるべきことですが、通常の人間としての暮らしと仕事とのバランスの問題ですので、過労死しなければ良いということではありません。つまり、月80時間を超えるような時間外労働(残業)が好ましくないのはもちろん、できる限り所定労働時間を超える労働は無くす方向で考える必要があります。法改正するべきこととして、特例条項付きの36協定の上限を年間720時間とするという案が出ています。各月の上限については細かい規定を作るようですが、1か月あたりの上限は80時間になると思っておいていただくのが良いのではないかと思います。このため、これを超える長時間労働が生じている場合は、その労働時間の削減をお考えいただく必要があります。なお、今回の働き方改革に関わりなく、特例条項によって月の時間外労働時間数を45時間を超える時間数にする場合は、年間で45時間を超えることができる月は最大で6回(6か月)のみですのでご注意ください。
 「長時間労働の是正」については、今までは比較的長時間労働が認められていた業界でも、時間短縮をするような施策を検討されています。また、「高度プロフェッショナル制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)」についても、この一環として検討されています。
 「環境整備」については、すでに施行されているストレスチェックや健康管理の強化が検討されています。また、テレワークの導入、副業・兼業の推進もこの一環として検討されています。
 「病気や子育て・介護等と仕事の両立」についても、すでに施行されている育児休業を最大2年まで延期できるようにしたことの他、病気と仕事との両立のために「企業トップ自らが経営課題として積極的に取り組むこと」を求めていたり、男性の育児休業取得の推進を検討していたりします。これらについては、以前からずっと言われていることですので、「働き方改革」として認識されていない方もいるかもしれません。
 「外国人材の受入れ」も、働き方改革の一環です。介護人材については、すでに話題になっていますが、他の業界でも外国人材の受け入れが検討されています。
 そして「女性活躍」も働き方改革の一環です。「女性活躍」も一時期報道されていた項目ですので、働き方改革の一環と認識されている方は多いのではないかと思います。このうち、パートタイム労働者が所謂「扶養の範囲」を意識しないで働けるための税制改革(103万円の壁を150万円に変更)はすでに2017年に行われていますが、教育訓練、出産育児による離職から正社員への復職、女性リーダーの育成など、対策を企業に求められているものもあり、時期がいつになるかは不明ですが、対応を考えなければならなくなることもあると思います。

 三つめの課題として、「キャリアの構築」があります。これには先程の女性活躍も含まれますが、その他に就職氷河期世代への支援や、若者の使い捨て防止対策、転職・再就職者への採用機会拡大、高齢者対策としての継続雇用延長・定年延長等が検討されています。これらも国としての施策だけでなく、各企業の対応が求められることではないかと思います。特に若者の使い捨て防止に関しては、該当する企業であるとなるとハローワークへの求人票を受け付けられなくなります。このような情報は求職者に広まりやすいですので、注意が必要です。
 この課題には、他に給付型奨学金の創設、教育費負担の軽減、地域住民による学習支援、不登校児童生徒対策等、労働とは直接関係がなさそうなものも含まれています。

 このように、「働き方改革」は非常に広範囲にわたるもので、長時間労働だけを対象としているものではないとお考えいただきたいです。また、各企業で対応しなければならないことも多く、各企業で一つ一つの対策を考えなければなりません。
 対策を考えるにあたっては、どの問題も従業員に無理を強いさせるものではないことをご理解ください。例えば、残業をさせないために仕事の持ち帰りが発生するのであれば、それは改革としては全く意味をなしません。また、生産性を上げるために過剰な労働の詰め込みになることも改革ではありません。女性を活躍させると言いながら女性に過重な労働をさせることも改革ではありません。このような事態にならないよう、対策を考える必要があります。
 何より、従業員や部下に丸投げするのではなく、まず経営者層が企業の方針としてするべきことを示し、企業全体で対策を考える必要があります。経営者が道筋を示さないと従業員は何をするべきなのかもわからなくなります。面倒なことが多いと思いますが、従業員が生き生きと働くための施策でもありますので、しっかりと対応をお考えいただきたいと思います。

 個別の企業における対応は、別途ご相談ください。
2018.1.23



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